
提示されたコンセプト-地球上のあらゆる要素を堪能できる空間-は、ひとりで原点に立ち戻り、日常を主観で捉え、自己の経験による内的刺激を交えながら、プリミティブで活き活きとした世界観の創出を目指す視座に立って思い描かれた。そこはひとりの生涯の記憶を喚起する、インテリアとエクステリア、色彩と空間、光と食、様々な輪郭が融合する建築的な空間デザインである。
日本の中枢、かけがえのない丘に立地するELEMENTS。古くからの面影を色濃く残す森と、清閑な彫刻広場に面し、森に面するレストランはすべてを日本の国樹である桜で包んでいる。優しくピュアに抽象化された空間に、自然の恵みを展示するディスプレイ、マチエールのあるガラス、オープンキッチンの炎や風景としての緑が交錯し、五感で感じることのできる世界観が醸成される。広場に面するバーはそのものが鑑賞空間であり、モダンな彫刻や行き交う人々、建築とランドスケープが重なり合い増幅する。リズミカルな黒大理石で仕上げられた床、漆黒の天井、黒鉄によるキャンバスが背景となり、丁寧に左官で仕上げられた紅い壁面、無垢材の紅いカウンターとディスプレイ、光と集う人々を浮かび上がらせる。最適化された素材とプロポーションが、輪郭と色彩のマリアージュを形成し、人が主役となる雰囲気を演出する。
ELEMENTSの赤は、色相や空間のわずかな明暗、組み合わせる背景の違いにより、多様な印象とファンクションを持つ。赤ほど微妙な色合いで多くのインプレッションを与える色はない。不安、怒り、優しさ、希望、活力などを想像させ、黒とのマリアージュは優雅さを与える。そんな赤が印象的である。そこに描かれた赤は、まるで夕陽のなかにいるように暖かく、心を優しく揉み解す。炎のように燃える激情を感じさせながらも、なぜか憂いを感じさせてくれる。組み合わされる二色の揺らぎ、たわみは極めてピュアで無機質な形をしているのに、暖かさや情熱などの人間味をもたらしている。